MBA留学日乗 2001年10月     | 前月へ |    | ホームへ |


10月1日(月)    二ヶ月目

時間は飛ぶように過ぎていく。あっという間にプログラム開始から一ヶ月がたち、今日はもう10月だ。この調子で時間が過ぎていけば、二年なんてあっという間である。正直焦りを覚える。このままのベクトルで二年後までTime Spanを引き伸ばしたとて、自分はいかほどの変化を自分にもたらしているだろうか。

卒業後の仕事がどうなるかはまだまったく不透明だが、退職前の給料よりも高い給料で雇用されることを僕は企図してすべての就職活動を行っている。高い投資の回収という命題のあるBusiness Schoolの学生としてはそれはある意味正しい態度なのかもしれないが、果たして自分は退職前よりも高いバリューを、本質的な(ネームバリューでなく)バリューを顧客なり雇用者なりにもたらすことができるのだろうか、などと思う。たかが一ヶ月でまだそんな心配をするのは早いかもしれん。しかし一年なんて、そのたかが一ヶ月が12回しかないのだ。

 

当地の木々もだいぶ紅葉が進んできた。10月中旬にはそれはそれは美しい一面の紅葉が見られるらしい。今が一番いい季節だ。週末は学生が遠来の両親を案内する姿を校内で多く見かけた。来年あたりは、自分と嫁さん双方の両親・家族を紅葉の名所などに案内したい、などと思っているが、とりあえず今はお預けでございます。


10月2日(火)   ホッケープラクティス

アイスホッケーの「トライポッド」初練習が大学のアイススケートアリーナで行われた。スタディグループ終了後、夜10時半より参加する。遅い時間にもかかわらず50名以上が参加していた。今日参加していた学生(初心者かつ男)だけでTUCK一年生の二割以上だ。

途中、リンクを一方向に滑り、笛が鳴った瞬間にストップして向きを変える、という練習をやったのだが、笛がなるたびにあちこちで氷にしたたか体を打ちつける鈍い音が聞こえる。試合形式の練習では、パックとは関係のない場所で転倒するものが続出する。まさに"It's Funny"という言葉がぴったりくる練習風景であった。(かくいう私もド素人)

練習は思ったよりも内容が濃く、あっという間に汗だくになる。久々の全身運動で、本当に良い気分転換になった。TUCKに来なければ絶対にやっていなかったであろうアイスホッケーだけに、この貴重な機会に二年間思い切り楽しむつもりである。

練習が終了したのは、何と12時半。大丈夫なのか。皆明日の予習は終わってるのか?ちなみに私はもちろん予習が終わっているわけもなく、帰って予習の続きをする。就寝は午前三時過ぎ。なかなかハードでんな、これは。


10月3日(水)    魔法使い

一時間目のOrganizational Behaviorの授業でプレゼンをする。内容は「世界で6個目のディズニーランドをどこに作るか」という、いかにも楽しげなものであり、我々のグループが選んだシンガポールの売りをStrategic/Cultural/Political viewpointsから訴えるというものである。プレゼン自体の出来はまあ普通であったが、笑いを一箇所も入れられなかったのは悔いが残る。

この課目の黒人女性教授は好きな教授の一人だが、今日は授業開始と同時に魔法使いの衣装に着替えて杖とりんごの入ったカゴを持って教室に現れた。当然教室は盛り上がったが、OBの分野ではそこそこ知られたビジネススクールの教授がトイレで事前に購入した魔法使いの衣装に急いで着替える様子(数分前までは普通の格好で教室にいたのだ)を想像して、「大変なのは学生だけじゃないのね」と思ったのであった。

 

ところで、アメリカ人は当初想像していたほどプレゼンがうまくない。というよりもだらけている。ポケットに手をつっこんで普段より心持大きめの声でしゃべる程度だ。昨年会社で参加したプレゼンセミナーで散々オーバーアクションの練習をさせられたのだが、この環境でそれをやるのは気恥ずかしくなるくらいなので、いまだもってアクションは使っていないのであった。(そういえばこのプレゼンセミナーでも外人講師と夜中に"Senda Mistuo Game"をやったような記憶が。。。)


10月4日(木)    Mid-term Exam三連発

ニューヨークタイムズ社の社長がTUCKにやってきてパネルのようなものをやるというので、やや期待して会場に行ったが、まったく面白くなかった。途中で集中力を切ったので、英語があっという間に言語から単なる音に変わる。たまった睡眠不足の解消に当てさせていただきました。

勉強の合間に息抜きにキャリアサービスライブラリー(就職関係の虎の巻のような書籍がたんまり置いてある)に行き、そこのおっちゃんトムとしばらく話していた。「いや、状況は厳しいねえ」。夕方某コンサル会社のブリーフィングに出席。「企業のコンサルティングへの支出は激減しており、10年前の水準に戻ったような厳しい状況です」----そんな話ばっかりだ。本日もレジュメをいくつかの企業に送る。

 

明日の午後はAccountingのMid-term Exam、土日は、Organizational BehaviorとGeneral ManagementのTake Home(おうちにお持ち帰り)Exam。今週末は残念ながら実質的に休みはなしだ。Take Home Examは一見楽そうな響きだが、だらだらと(取りかかるのを先延ばしにするという意味で)貴重な週末を食いつぶしてしまいそうであまり好みではない。(それは自分の問題か)


10月5日(金)     Accounting試験終了

ここしばらく冷え込みが一段落して、穏やかな天候が続いている。今日の天気は本当にベストウェザーだった。Accountingの試験が始まるまで二時間ほど時間が空いたので、大学正面の芝生"Dartmouth Green"に寝転んでのんびりする。芝生の上には老若男女が所狭しと寝転んで、つかの間の好天を味わっていた。

AccountingのMid-term Examもとりあえず無事終了。簡単だったので、きっと平均点も高いことだろう。

一週間分のたまった疲れを癒すべく、試験が終わったら即帰宅して寝るつもりだったのだが、いざ試験が終わってみるとようやく一週間が終わった開放感でとてもすぐに寝られるような気分ではない。とりあえず、試験の終了を祝ってまたも打ちっぱなしへ出かける。

夜はTさんご夫妻がカレーをご馳走してくれるというありがたいお言葉をかけてくれたので、日本人6人で押しかけてご馳走になってしまった。(そういえば今年のTUCK一年生には"Tさん"が多いですね。今日ご馳走になったTさんは、この日記に昔(留学前)から登場していたTさんとも、同じスタディグループのT内さんとも、紅一点のT嬢ともまた違う、Tさんなのです)。

久しぶりのカレーライスは、本当に涙が出るほどうまかった。日本で食べてもうまいカレーだと思うのだけど、実に貧弱な食生活を送っているだけに、その美味さはまた格別なものがあった。


10月6日(土)    ケースライトアップ

朝から五時間かけてスタディグループでGeneral ManagementのMid-term Examをやる。ケースを読んで、設問に対する解答をグループ共同で提出する、「ケースライトアップ」と呼ばれる形式の試験である。よーいドンでメンバー全員が読み始めるのだが、予想どおり他のメンバー全員が読み終わっているのに、僕はまだ3分の2ほどしか読めていない(しかも分からぬ単語は飛ばしていくため理解度が彼らより低い)。「待ってたら時間がかかるから先にディスカッションを始めてくれ」と言うと、「いや、全員が読み終わるまで待つよ」。待たれても迷惑なんだけどな、と思いながら読み進めているうちに、皆我慢できなくなったのかいつのまにかディスカッションが始まっていた。このへんアメリカ人は、言うこととやることの違いが分かりやす過ぎる。

ライトアップは、クオリティを考えるととても「俺がやる」などとは言えない。どうしても彼らに頼る形になり、居心地が悪いこと甚だしい。今回に限らず様々な場面で、グループメンバーに頼らざるをえない自分に気がつく。よく考えると、これまでの自分の人生でこれほど他人に依存した経験はなかった気がするのだ。他人に頼られ、依存され、自分の時間や能力といったリソースを提供することに比べると、現在の状況は甚だ精神的に疲れる。

朝10時15分から始めたディスカッションは、途中ピザをコーラで流し込みつつも休みなくつづき、午後3時15分きっかりに終了した。このへん、異常にstrictである。聞いてみると他のグループでもストップウォッチを持ってはかるなど、同様であったらしい。「なんでそこまで厳密に計る必要があるんだ?馬鹿げてる」、というのが日本人・韓国人大半の意見。西洋(というよりもアメリカ)と東洋の文化的相違も垣間見えて興味深いが、僕は決して彼らアメリカ人が優れて倫理的であるなどとは思っていない。それどころか、極めてうそ臭い。これについては時間のある時にじっくり書きたいところだ。

 

試験終了後、ゴルフの練習ラウンドに行き、メディカルスクールのSさんの一団に遭遇する。プレーの方は今日も散々の出来。同じSachemに住んでいる韓国人同級生の三歳の女の子が小さな子供用クラブを振っているのを見て、娘に会いたくなった。


10月7日(日)     空爆開始

アメリカ空爆開始。空爆の当事国アメリカに居るにもかかわらず、日本に居たときよりもこの手の事柄に関する感度が鈍くなっていることに気づく。ネットやニュースを確認する頻度が極めて低くなっているためだ。ものごとを考える深さも足りぬ。

今日は、ほとほと自分の頭の悪さを思い知らされた。いや、正確に言うと毎日思い知らされているのだが。

夜、自宅でLeading OrganizationのMid-term Examをやる。

今朝は久しぶりに12時間の睡眠をとって、溜まった疲労回復に努めたが、当日のうちにその貯金は吐き出すことになりそうだ。久しぶりに慣れぬ長時間の睡眠をとったので、腰が痛んでしようがないのであった。


10月8日(月)    初雪とLink Dinner

朝、学校に向かって車を運転していると、何やら前方をちらつくものが。まさかと思ったが雪である。

まじですか。。。まだ10月になったばかりですよ。どうりで今朝は冷え込むと思ったが、つい先日やってきたと思った秋は、あっという間にかなたへ去りつつあるようである。これからいよいよ長い長い冬がやってくる。

 

ところで、TUCKには"Link"という制度がある。LinkとはすなわちMentorみたいなものであり、すべての一年生に一人ずつ上級生の"Link"が学校側から割り当てられているのである。「TUCK Lifeに関わるどんなことでも相談してください」という案内メールとともにそれぞれのリンクが紹介されていた。他のスクールで同様の制度があるのかは知らないが、これも極めてTUCKらしい制度といえるだろう。なお、学校側もだいたいバックグラウンドが似通った人を選んでいるようなので、日本人のLinkは日本人であることが多い。ちなみに僕のLinkは、商社から派遣で来ている日本人二年生Wさんである。

今日は、"Link Dinner"と称して学校じゅうで、各カップルが一斉に食事をする日なのであった。日本人のリンクカップルが何組かまとめて二年生のKさん宅で焼肉をご馳走になった。お土産までたんまりいただいて、何ともすばらしい晩餐であった。

午後11時前にディナー終了後、図書館に戻ってStatisticsの宿題のつづき。こんな時間にもかかわらず、図書館内は大盛況である。午後12時に図書館が閉まった後は、スタディルームにこもって宿題を仕上げた。ようやく他の部屋からプリントアウトする音が聞こえなくなったのは、午前二時。


10月9日(火)   Dog Policy

朝、車のフロントガラスががりがりに凍結しており、解凍にしばしの時間を要す。

 

午後、勉強を中断して"Student Board Election"と題する、いわゆる生徒会的な役職に立候補する学生たちの立会演説会を聞きにいった。最後席から演壇を見下ろしながら聞いていると、右隣でいびきの音が聞こえる。「しようがねえな、居眠りはいいけどいびきはやめろよ」と思いながら振り向くと、何といびきの主は犬であった。そういえば、今日の午後受講したStatisticsのReview Sessionでは、後ろで寝ていた犬が、「うぉ。。うぉう。。。」と寝言を言っていた。

TUCKは独特の"Dog Policy"なるものを持っており、その内容についてはStudent Handbookにも細かく記載されている。要は、学校に犬を連れてくるのはかまいませんよ、ということだ。ダイニングホールなど一部例外を除き、どこでも連れてきていいのである。授業も、特に教授や同級生の反対がない限り、いっしょに受けても良い。パーティーなどになると、本当に犬だらけになる。もっとも、学校に連れてこられる犬たちは、実によく躾られている。

僕は犬好きなので、この環境はたまりません。正直、ビジネススクールの校舎の中で、こんなに頻繁に犬と触れ合えるとは想像だにしていませんでした。犬好きのApplicantの方、TUCKは絶対お勧めです。犬をネタにしたエッセーなどどうですか。

 

スタディグループの後、今日も11時過ぎからアイスホッケーの練習へ。Tripod内で4チームを作って早速リーグ戦が始まったのだが、今日は一・二年生合同であったため、まったく歯がたたなかった。ちなみに私が所属しているチームの名前は"Night Cap"。氷上をかけずりまわり、転げまわるアイスホッケーの練習は、Night Capに勝るとも劣らぬ睡眠導入剤の役割を果たしてくれそうである。


10月10月(水)    一進一退

「ある日突然英語が面白いように聞こえるようになる!」というオーソン・ウェルズをフィーチャーしたどこぞの広告ではないが、多少はそのような気になることがあるもんである。クラスのディスカッションもほとんど聞き取れる、自分がしゃべる時もほとんどつっかえずにしゃべれる、おお、俺って英語しゃべれるじゃん、上達したなあ、そんな日もごくたまにではあるが、ある(ある友人はこれを「英語の神様が降りてきた日」と表現していた)。一方で、いったい今日はどうしたんだというくらいクラスメートや教授のしゃべる内容の意味がつかめない日もある。しゃべる方も中学一年生レベルの単語の羅列状態で、まさにカタコト。理由は不明だが、こんな日々が交互にやってくるのだ。今日はその後者の日であった。いらだたしいくらいに英語が聞き取れなかった。まったくもって分からなかった。言ってる内容が分からないのに、意味のある発言などできようもない。

一進一退をつづけながら、傾向線としてはたしかに右肩あがり、といけばいいのだが、そのスロープは当初考えていたよりはるかに緩い。実に困ったものだ。

ここにやってきたのは英語の勉強のためではないのに、最も苦労するのが英語だというのこの現状は、また、言葉が障壁となって本来吸収できているべき内容をザルのように取り逃がしているかもしれぬというこの現状は、僕にとってフラストレーションがたまること甚だしい。

 

一般的に日本人学生の英語力はやや他のインターナショナルに比べると劣っているのは否めないようだ(あくまで平均論。当然帰国子女もいれば、ドメスティックでもバリバリの英語を話す人もいる。そして僕のような低レベルの輩がいて、すべてを平均したレベルがやはり他の国の学生より低い)。しかしながらTUCKにおける日本人学生の数は他のどの国の学生よりも多い。当然アドミッションは我々に何かを期待しているからこそこれだけの学生をadmitしたはずである。日本人の英語力について何らかの認識があるのか否かもさりながら、この期待している点というのは実に興味深いところである。そのうちアドミッションディレクターにインタビューをするつもりなので、このへんについても確認する所存。(インタビューの内容は当HPにも掲載します)

そんなわけで、今日は英語にフラストレーションを感じた一日であった。


10月11日(木)   キャリアサービス

まだまだ先のことだと思っていたボストンキャリアフォーラムが、もう一週間先まで迫ってきた。正直アサインメントに追いまくられて、準備不足は否めないところである。ボストンキャリアフォーラムとは某DISCO社が主催する米国留学中の「バイリンガル」を対象としたリクルーティングイベントである。ビジネススクールの学生も日本で就職を希望しているもののほとんどが参加する一大イベントだ。したがってバイリンガルではない私も参加する予定。

しかし、今年はテロの影響により出展企業数が激減している。もともと私が志望する業界はあまりこのイベントには出展しないことで知られていたのだが、数少ない出展予定企業も今月に入って続々と出展を取りやめてしまい、結局ほとんどお目当ての企業は残っていないような状況になってしまった。まあ、勉強のために投資銀行や消費財メーカーなどもまわってみるとしよう。

 

本日はキャリアサービスオフィスの担当者ベッキーによるレジュメカウンセリングを受ける。ビジネススクール受験の時に一旦仕上げたレジュメとはだいぶ趣が異なり、なかなか仕上げるのに手こずっている。来週月曜日の夕方が学校にレジュメを提出する締め切りだ。

他のビジネススクールのキャリアサービスを経験したわけではないので、比較はできませんが、TUCKのキャリアサービスオフィスもなかなか悪くないと思います。何よりも学生数が少ないので、かなり色んなお願いにフレキシブルに対応してくれますし、学生数が少ない分個々の学生のバックグラウンドなどをきちんと理解しようという姿勢もうかがえます。
といっても、やはり日本で就職する我々にとっては、米国内で就職活動をする学生に比べるとキャリアサービスオフィスのカバーする範囲は圧倒的に限られているようではあります。


10月12日(金)    ゴルフと焼肉

もう数分で今週の授業も終わりか、と感慨にふけっていたところ、アカウンティングのStickney教授よりコールドコールを受けた。その前に質問していたのでもう自分には当たるまい、と決め付けていたが、たしかに質問とコールドコールはまた別物である。

授業終了後は、車で南へ40−50分ほど走ったところにあるゴルフ場へ。今日は、TUCKの日本人一年生vs二年生の学年対抗ゴルフ大会を行うのだ。僕は実際にラウンドするのは今日が初めて。結果は、土を掘りまくっての136。あまりに強く地面を強打しつづけたため、手首を痛めたほどである。団体戦の結果の方は、途中で日没となってしまい最後まで回れない組があったため、また次回に持ち越しとなった。

それにしても当地のゴルフ場は非常に安くプレーできます。今日のゴルフ場も相当きれいなところでしたが、プレーフィーは21ドルでした。

ゴルフの後は夏にもバーベキューをさせてもらった一年生Kさん宅に移動しての焼肉ディナー。奥様がたが早くから仕込みなどをしていただいており、本当においしい食事を満喫させていただいた。日本からキャンパスビジットに来ていたapplicantの方も含め、大勢で深夜まで食べかつ飲んだ。


10月13日(土)     パートナー

3週間ぶりで試験のない土曜日であったので、昼過ぎまでぐっすり眠る。

夜は"Semi-Formal"と称する、少しきちんとしたスーツで集まるパーティーが行われていたのだが、基本的にはパートナー同伴ということであったので今回は参加しないことにした。一部からは、僕と同様現在奥さんが不在である隣人I氏と"パートナー"ということで参加しては、という提案もあったのだが、シャレのつもりが本当にTUCKコミュニティの中でそういう噂が広まってしまうと、それこそシャレにならないのでやめにした。

ところで、TUCKには夫婦とも学生あるいは夫婦とも教授というカップルが数多くいます。今年の一年生は220数名ですが、そのなかでカップルが7組もいるのですから、割合としては非常に高いと言えるでしょう。(ちなみにその7組のうちの一組はゲイのカップルです。Auditoriumなどで、その二人が肩寄せ合って座っているのなどを見ると、申し訳ないとは思いつつどうしても引いてしまいます。)このパートナー学生・教授の多さもTUCKコミュニティのひとつの特徴といえるかもしれません。


10月14日(日)     初めての散髪

アメリカに来て初めての散髪をする。衣料品店チェーン"JC Penny"内にある美容室で、出てきた美容師は若い元気のいい姉ちゃん。散髪用語(刈り上げてくれとか、もみあげはあまり短くしないでくれ、とか)がまったく分からないので適当に指示したところ、何となく分かったような顔でうなずいていた。こちらの普通の散髪屋の技術の低さは目を覆うばかりだという話を聞かされていたので、いったいどんな髪型になるのやら、と覚悟していたが、意外にも出来上がりは普通だ。

しかし、所要時間はわずか10分。シャンプーはいる?と聞くので「もちろん」と答えたところ、カットする前にシャンプーをされた。「カットした後にシャンプー?もちろんしないけど、どうして?」とのこと。それじゃ意味ないような気がするが、まあ気にしないことにしよう。ちなみに、価格は$20(チップ除く)と日本の価格に比べるとかなり安めである(それでも当地の相場では平均よりやや高めか?)。

しかし、こうして比べてみると、やはり日本の理髪店のサービスというのは素晴らしいものがある。マッサージをしてくれたり、耳掃除をしてくれたり、顔を剃ってくれたり。アメリカの美容業界というのも随分と差別化の余地がありそうな気がするのだが、おしゃれとは程遠いアメリカ人のことゆえ、価格以外のサービスなどまったく魅力を感じないのかもしれないな、と思いつつ帰ってきた。

 

美容室の床に散らばっていた髪の毛は、ブロンドやグレーのものばかり。その上に自分の黒い髪が落ちていた。
そういえば黒人と白人は同じ美容室に行くのだろうか。


10月15日(月)     救援物資の段ボール

日本の嫁さんより風邪薬・食料品等の救援物資を詰め込んだ段ボールが届いた。いずれも日本にいてはさほどありがたみも感じないようなものだが、こちらでは入手困難なものばかりなので、僕にとっては貴重な品々である。段ボールを空けて品物をカーペットの上に広げていくと、「おお、キューピーコーワゴールド。はるばる日本からよく来たな」という気分になる。古来より故郷からの小包というのは、郷愁を誘うものと相場が決まっているのだ。

先週実家からも段ボールが届いたのだが、その時は段ボールには開梱したような跡は見られなかった。今回の段ボールは豪快に開梱した跡が見て取れる。段ボールの中身の小さな箱まですべて空けて中身を確認したようであるが、今回の炭そ菌騒動の下ではやむをえぬところだ。

炭そ菌などという言葉は、某東アジア地域の某国の脅威について語る際などにかろうじて人の口の端にのぼる極めてマニアックなターミノロジーであったのだが、ここにきて一気に脚光を浴びている。しかし、肝心の米国に住んでいる自分の方が、本件に関する情報については疎いのであった。"Anthrax"というニュースで頻繁に語られる単語を知らなかったので,数日間は世間で何が起こっているのかよく分かっていなかったのである。

それにしても配達業務に携わっている人々は家族も含めてさぞかし不安なことだろうと思う。


10月16日(火)     多忙な週

今週、TUCKの日本人一年生は皆忙しそうである。週末に10/19(金)-10/21(日)の日程でボストンキャリアフォーラムが行われるためだ。金曜日の朝から面接をするためには当然前泊が必要であるし、フォーラムに先立って木曜日にレセプションやインタビューをする企業もあるため、だいたい皆木曜日午前中の授業が終了次第車でボストンに向かうようである。したがって、金曜日の授業は欠席することになる。すなわち金曜日提出のアサインメントもすべて水曜日中には前倒しで仕上げてクラスメートに託さなければならない、ということである。これだけでも通常の週に比べると相当きついのだが、それに加えてインタビューの準備やらレジュメのブラッシュアップやら企業とのコンタクトやらを行わねばならない。
ということで、日本人一年生は皆一様にばたばたしているのであった。

しかし、肝心のキャリアフォーラムの方は出展企業数の減少が止まらず、ついに42社にまで減ってしまった(当初の予定では120社以上)。まだまだ減りそうな勢いである。キャリアフォーラムにはもともと出展しないコンサルティング会社についても、11月に行われる予定であったインタビュースケジュールを2月頃まで延期する会社が続出している。就職活動も、なかなか波乱万丈の滑り出しのようだ。

 

今日のスタディグループは実にフラストレーションのたまるものだった。Economicsのグループ提出の宿題で、どう考えても自分の案の方が正しいのだが、それをうまく言葉で説明できず、議論がどんどん違う方向に流れていったのだ。しかし、いかな考えも持っていようとも、コミュニケーション能力が欠けていては、何の考えもないのと同じである。


10月17日(水)    イチロー

何とかボストンに行く前に宿題を終わらせる目処がついてほっとしつつ、ビールを飲みながら最後の仕上げをしているところである。至福のひとときなり(こんなものが至福のひとときとは何と華のないつまらぬ日常であることよ)。

 

リーグチャンピオンシップ初戦は残念ながらイチロー率いるマリナーズはヤンキースに敗れてしまった。しかし、首位打者・盗塁王をとったレギュラーシーズンの活躍もさることながら、プレーオフに入ってからの活躍は凄まじいものがある。まさに、「率いる」という言葉にふさわしい存在だ。

テレビの画面を通しても明らかに分かる、余人(といっても皆メジャーリーガーなのだが)とは異なる彼の身のこなし、判断の速さ、などを見るにつけ、やはり日本人として誇らしくないわけがなく、同じく米国で一年目を過ごしている身としては勝手に鼓舞されたりもしている。しかしながら、一方では一年目で誰にも文句を言わせぬプレーを見せつける彼と、たかだかMBAのカリキュラムごときに喘いでいる自分の現状とをつい比べてしまったりもし、そのあまりの違いに凹むこともまたないわけではない。同級生と話していても、多かれ少なかれ皆そういう意識はあるようで、イチローと我が身を結びつけた会話をすることもけっこう多い。
是非ともイチローがワールドシリーズで活躍する姿を見てみたいものだ。

明日は久々のボストン入りである。


10月18日(木)    ボストン入り

午前中の授業を受けた後、午後から同じT内氏と二人で車でボストンへ入る。高速道路で二時間強のドライブだが、アメリカの距離感にだいぶ慣らされてきた身としては、非常に近く感じる。

T内氏をはじめ他の日本人学生達は皆投資銀行のレセプションなどに出かけていったようだが、その方面への興味の薄い僕は部屋で仮眠をとった後、ボストンの街をふらふらと散策した。ボストンはやはりハノーバーとは違って大都会である。何が違うといって、ドライバーの歩行者に対する態度がまったく違う。歩行者用信号が赤の時にを渡ろうとしても止まってくれる車は皆無である(それが普通か)。また、ハノーバーでは姿を見かけたことがないホームレスも多く見かけた。車で二時間の距離だが、流れている時間はまったく異質のもののようである。

テロの影響でかなり厳しいセキュリティチェックが行われていると聞いていたのだが、ホテルにも警官らしい姿はまったく見なかった。これなら何だって持ち込めそうな感じである。


10月19日(金)     ボストン・キャリアフォーラム

朝9時過ぎにホテルから徒歩でボストンキャリアフォーラムの会場である"World Trade Center Boston"に向かった。リクルートスーツの日本人学生が溢れている。こんなに大量の日本人を見たのは8月の出国以来初めてのことだ。彼ら彼女らは外見から判断するにほとんどがアングラ(学部)の学生のようである。

午前中は出展企業のブースを見て回った。当初予定された規模の約3分の1に縮小されただけあって、二時間近く会場を歩きまわると、もうほとんどやることもなくなってしまう。もちろん、I-Bankへの就職を本命とする学生はその頃インタビューに次ぐインタビューの連続なのだが。

午前中、今後の練習も兼ねて私も某I-Bankのインタビューを受けてみた。アメリカ人と日本人とそれぞれ一回ずつ。大学卒業時以来実に久しぶりに受けた就職の面接でもあり懐かしかったが、やはり準備は必要だと実感する。

夜は久しぶりに再会した受験仲間と食事をする。良い話も聞けて楽しい夜であった。


10月20日(土)     数々の再会

昼前までホテルで寝てたまった睡眠不足を解消したあと、せっかくボストンに来たのだから、と有名な日本食料品店「寿屋」へ向かう。茶碗や汁碗などを買い込んだ。

午後から参加したキャリアフォーラム会場で、今日も数多くの旧知の人々と再会した。中でも最も驚いたのは、夜の某I-Bankのディナーにて、数年前に僕のいた部署でインターンとして働いていたI嬢と再会したことである。現在コロンビアの大学院に留学中で、I-Bank中心に職を探しているとのこと。世の中狭いものだ。

ディナー終了後、ボストン大学MBAのTさんのアパートで開かれたパーティーに参加する。僕の貧困な想像力をはるかに超えたゴージャスなアパートであった。ここでも多くの知人に再会することができた。

深夜、真っ暗闇の高速道路を二時間飛ばしてハノーバーに帰宅したのは午前三時過ぎである。週末のボストン滞在は大変充実していた。数多くの友人知人とも再会したし、また歴史を感じさせるボストンの街もなかなか魅力的であった。しかし、ボストンとは明らかに違う、虫の音しか聞こえぬSachem Villageの自宅前で、満天の星空を見上げてやはり自分にはこの田舎街の方が合っているな、と実感して眠りについたのだった。


10月21日(日)    日本の国際競争力

世界経済フォーラムが発表した国際競争力ランキングで日本が21位に後退したという記事を目にした。ちなみに毎年スイスのビジネススクールIMDが発表している"World Competitiveness Yearbook"では、日本は26位である。

このランキングの低さと長期低落傾向は極めて危機的な状況なのだが、最近この手の情報を繰り返し目にしているうちに、日本全体が(自分自身も含めて)やや不感症になってきているのを感じる。20位台をうろうろする二流国家であると国際社会で見なされていることを、当然のように受け入れつつある国民。その事実自体が、より強く憂慮すべきことだ。負け犬になってしまう前にこの流れを変えなければいけない。

しかしながら、現在自分が日本のビジネススクールでなくアメリカのビジネススクールに来ているということ(「ビジネススクールにおける教育のクオリティ」は評価項目のひとつである)、そして卒業後も一旦は米系企業で働く可能性が高いということ。この事実は、じりじりと僕を苛む。たとえ長期的には日本の国益に貢献するための必要なステップであるとの理由づけを自分に対してしてみたところで、やはり実にジレンマを感じるところである。

 

夜、隣家I氏と一緒にビール片手にマリナーズ対ヤンキース戦を観戦するも、佐々木がまさかの2ランを打たれて逆転負け。二人とも缶を握ったまましばし呆然とする。


10月22日(月)     London Business School

London Business School(通称LBS)という名前を聞いたことがあるだろうか。欧州では、フランスのINSEADと並ぶ名門校であり、Financial Timesのランキングでも世界8位にランクされているトップ・スクールである。

そのLBSに今年から通っている友人のO氏よりこのような写真が届いた。例のビートルズのAbbeyroadをパロってEMI Studioの前を四人で歩いているところらしい。しかし、なぜ全裸?しかも白昼堂々。。。。どうやらLBS新入生の通過儀礼だと思われる。

洋の東西を問わず、昔から大学等ではこの種の新入生「歓迎」のための通過儀礼が行われているところが多いようだ。Wharton Schoolでは、上はスーツに下はパンツという姿で飲み歩くという話を聞いた。我がTUCKでもそこまでの通過儀礼はないが、多少それに似たものはある。しかし、全員全裸というのはあまり聞いたことがない。

ちなみに個人的にはこういうの嫌いではありません。アプリカントの皆さんは、このへんの儀式の内容がお気に召すかどうかも評価軸のひとつに加えて出願校を選ばれては如何でしょうか(そうか?)。

[ 個人が特定できないよう、かなり画像を小さくし、顔にぼかしを入れています。Oさんはどれでしょう? ]

(後記)
てっきり「新入生皆がやる通過儀礼」だと思っていたら、どうもこの
Groupの自発的行動のようでした(掲示板参照)。失礼しました。自発的行動と聞き、尚更偉大な(?)行動であるとの感を強くしましたが、何はともあれLBSアプリカントの皆さん、ご安心ください。(それにしても素晴らしい構図ですね。)


10月23日(火)    秋深まる

10月8日の初雪以降やや緩んでいた冷え込みが、ここのところまた再び強まってきた。一日の寒暖の差が激しいために、朝の登校時には駐車場脇を流れるコネチカットリバーからもうもうと霧が発生しているのが眺められる。自宅周辺も、朝は10メートル先が見えないほどの濃い霧に包まれていることも珍しくない。

そしていつの間にか、本当にいつの間にか気がついたら紅葉のピークも過ぎていたようだ。一日くらいは近隣の紅葉の名所に紅葉見物に出かけるつもりだったのだが、今年はそれも出来ずに終わりそうだ。

 

今日はオンキャンパスで企業のインタビューが大々的に行われていたため、スタディルームの数が極端に不足していた。そのため、コンピューターラボ内のオープンスペースでディスカッションをする。ラボ内にもゴールデンレトリバーがいたが、まだ子供で我慢ができないらしく、部屋じゅうをうろうろと歩きまわっていた。Statisticsの説明をしながら、犬の頭を撫でる。Micro Economicsの需要供給図を描きながら、犬にぺろぺろ舐められる。TUCKならではのスタディグループの光景である。

 

(Sachem Village内の紅葉の写真を掲載します)

【左の写真の奥に見えるのが、僕とI氏の住むDuplexです】


10月24日(水)    Kids Halloween Party

今日はTUCK Partners Club主催のKids Halloween PartyがBuchanan寮で行われた。仮装した子供たちが"Trick or Treat!"と言いながら寮の各部屋をまわるのだ。日本人で唯一Buchanan寮に住んでいるT内氏の部屋で子供たちを迎え撃つべく、昼休みを利用してKマートへ買い物に行ってお菓子をしこたま買い込んできた。部屋の前にはハロウィンのバルーンを掲げて準備万端である。

午後四時頃から子供たちがお菓子を入れるためのかぼちゃの形の入れ物を持って、わらわらとやって来る。全部で30人くらいはいるだろうか。クラスメートBillの生後二ヶ月の赤ん坊もしっかり仮装している。「こんなに買い込んで全部はけるのだろうか」と心配したお菓子は無事あっという間になくなってくれた。

ちなみにHalloween本番は10月31日らしい。今年は参加できなかったが、来年のKids Partyでは娘にどんな仮装をさせようかと今から考えているところである。

     

【今回一番かわいかった女の子(左)とクラスメートBill一家(右)】

 

夜は10時45分から12時半までアイスホッケーのリーグ戦に参加。試合は2−5で敗れる。アイスホッケーの方ももっと技術を磨かねば。

何だかここのところ勉強とは関係のない内容ばかりですが、実は今週末からFinal Examが始まるため、勉強の方も佳境に入っていることを一応付け加えておきます(笑)。ちゃんと勉強もしておりますので。


10月25日(木)     給料日

「25日か。給料日だな」、とプー太郎のくせにふと思う。給料明細が配られ、中身の少なさに舌打ちをしつつ、しかし自分の一ヶ月の生活の中では相対的にもっとも懐具合が豊かになった日であるがゆえに喜んで飲みにいってしまったりする、そんな日だ。

私費留学をする、ということはつまりサマーインターン中など特別な時期を除いて収入がまったく途絶えているということなわけで、銀行の残高が一方的に減りつづける生活を送るということを意味する。幸いにして今までそのような生活を送ったことがなかった僕は初めて現在その特別な生活の持つ何ともいえぬ哀感のようなものを味わっている。

銀行の当座預金口座を常にチェックし、小切手を切ると残高不足にならないよう普通預金口座から当座預金にTransferする。そのたびにモニターに表示される口座残高は減りつづけていく。毎月決まった日に少額とはいえ一ヶ月の生活を維持することができるだけのお金が口座に振り込まれる生活。そんな平凡な日々というもののありがたさを身に沁みて感じるのはこういう時であり、また、「ああ今日は給料日だったな」などとふと考えてしまう自分をおかしく思う今日のような時である。

 

明日で秋学期Aが終了し、土曜日からはFinal Examが始まる。今日はAccountingとOrganizational Behaviorの最終授業であった。AccountingのStickny教授の授業は楽しかった。よくぞここまで「Accounting」を楽しく教えてくれるものである。最後の授業では全学生が授業の内容や教授の教え方の評価をするのだが、初めて全項目に満点を付けた。最後は学生全員が拍手をするのだが、その拍手の音の大きさ、長さ、やはり皆同じ思いだったのだろう。

 

間もなくFinalだというのに今日は試験勉強はなかなか進まなかった。明日のEconomicsのケースでトヨタのカンバン方式を取り扱うため、日本人であり、なおかつ自動車業界出身者としては準備しないわけにはいかんでしょう、とウェブなどでいろいろと情報を集めていたら午後4時から6時間以上もかかってしまったのだ。(どんなに準備してもたどたどしい英語じゃ説得力イマイチなんだがな)

同級生のデイビッドから「Econの試験の準備か?」と聞かれ「明日の予習をやってる」と答えたところ、「嘘だろ、みんな明日の予習なんかしてないぞ」と呆れられる。誰もしてない、というのは大げさだが、当たらずといえども遠からずなり。少しMid-term Examの結果を見て気を抜いているところがあるかもしれない。明日は試験勉強に相当注力しないとまずい。気を引き締めてかかることにしよう。


10月26日(金)     英語の発音の違い

アイスホッケーで背中をひねったらしく、昨日・今日とうめき声を上げながら過ごしている。図書館で勉強しながらファイルに手を伸ばそうとした瞬間に激痛が走り、「うっ!!!ぅぅぅぅ!!」などと声を上げていたら、衝立を挟んだ対面で勉強している学生がぎょっとするらしく(そらするわな)、そのたびにキーボードのタイプの音が止まっていた。

同級生のOさんが指圧の心得があるということを聞いていたので、メールルームで会った際に整体のようなことをやってもらったところ、少しは楽になった。それでも、まだ痛みは結構残っている。

前置きが長くなったが、発音の話である。

Oさんに整体をしてもらっている様子を隣で見ていた同級生と午後駐車場ですれ違った時に、「背中の調子はどうだ?(How's your back?)」と聞かれた。それを僕はどうしたわけか、「これから学校に戻るのか?」と解釈し、「ああ、明日のAccountingの試験勉強をするからね」と答えたのだった。それに対する彼の反応。「O....Oh......I see........See you later...」。

「背中の調子はどうだ」と聞いて「会計の勉強する」と答える。まさに「笑点」の大喜利のような問答に、彼も首をひねったことだろう。僕の方はといえば、それから10分ほどして突然、そういえば彼の言葉は"How's your back?"だったのではないか?と気づいたのだった。

 

どうにも英語の聞き取りが向上しないが、その原因を考えるに自分の中での英語の発音のイメージの殻がまだ破れていないようである。すなわち自分が日本で文字を目にしながら頭で思い浮かべていた発音のレベルの粋を出ていないのだ。自分の中では、"How's your back?"イコール「ハウズ ユア バック?」である。しかして彼の発音は僕にはどう聞いても「ハゥジュ バッ?」(カタカナにするのもどうかと思うが)にしか聞こえない。そうするともう、"How's your back?"にはシナプスは到達してくれず、かろうじて聞き取れた"Back"とその前の"ハゥジュ"をつなぎ合わせて大胆不敵なGUESSを繰り広げるしかない。("What?"、"Sorry?"、"Pardon?"は一回の発言につきだいたい二回くらいが限界です。三回言うと、皆「いや、たいした話じゃないからいいよ」と言います。したがって二回聞いて分からなかったらGUESSに突入するわけです。)

これを改善するには、どんどん量を聞いて、自分でも話して、文字と音をつなげる回路を増やしていくより他ないのだろう。

ところで、単語レベルでも、いくつか日本で使っていた発音とは違うものがある。"Multi"は米語では「マルチ」でなく「マルタイ」と発音するようであるし、"behind"は「ビハインド」でなく「バハインド」と発音する人が圧倒的である。僕などからすると、「バハ」という破裂音はかなりfunnyなのだが。

さらに、「おまえの言ってること分かった!なるほどなるほど」と言う時に、こっちの連中はよく「Gotcha!」(ガッチャ)と言う。"I've got you!"の略らしいのだが、「ガッチャ!ガッチャ!」と繰り返された日には(悪いことにたいがいこの言葉は繰り返される)、僕としては日本の駄菓子屋にある「ガチャガチャ」(関東ではガチャポンというらしいが)、を思い浮かべてしまい、笑いを抑えることができない。

「おまえの言ってること分かった!」と言ってやってるのに、何を思ってか「ふふふ」と笑う東洋人。さぞかしこの日本人はアメリカ人の理解を超えたおっさんだと思われていることだろう。


10月27日(土)    電卓

AccountingのFinal Examである。Accountingなので、当然電卓を多用することになるのだが、基本的にMBAの学生は皆いわゆる財務電卓と呼ばれるものを使っている。Present ValueやFuture Valueを計算するための関数がプログラミングされているので、たしかに便利なのだ。ちなみに推奨機種はビジネススクールによって異なるようで、TUCKの推奨機種はHPの"17B-II"というモデル。僕もそれを一応持ってはいるのだが、どうも使い勝手が悪く、日本のディスカントストアで数年前に買った愛機"CASIO DS-2K"をいつも使用しているのだった。ちなみに、HPの電卓はCASIOの電卓のおよそ五倍の値段だ。

今日、Accountingの試験開始前にリュックからおもむろに愛機を取り出したところ、「ヒロシ!それはキャッシュレジスターか!」と、そのあまりの大きさに驚かれた。分かってないな、ちみたちは。そんな小さい電卓じゃさくさく計算できんだろうが。(しかし、AccountingだからまだCASIOで計算できますが、Financeではさすがに愛機とはおさらばせざるをえません)

使い慣れた電卓のおかげもあって、試験結果はまあまあの出来。

【妙に使いづらいHP 17B-II(左)と愛機CASIO DS-2K(右)】

夜は、同じセクションのアメリカ人学生が「セクションパーティ」を自宅で開くというので、日本酒を二本持って出かけた。(TUCKの今年の一年生は全部で220人強ですが、それが4つのセクションに分けられています。僕は「セクション3」です。基本的にコア科目はすべてこのセクションで受けることになります。)ひとつのセクションの人数は60人弱なのだが、今日のパーティーには家族も含めて30人以上が来ていた(+犬二匹)。毎回思うことだが、それを収容できてしまう家もすごい。日本酒は、皆"I like it!" "awesome!"などと言いながら飲んでたが、顔がそう言ってないんだよな。意外にも、「正直にまずいと言ったらせっかく持ってきたのに悪い」と気を使ってくれるらしい。

帰宅してOBのテストをやるつもりだったが、すっかり酔っ払ってしまい、酔いを醒ませるのに数時間を要してしまった。


10月28日(日)     日曜日なのに

せっかくの日曜日なのだが、明け方までOrganizational Behaviorのテストをやり(結局取り掛かったのが、日付が変わってかなりしてからであった)、起きてからは翌日のStatisticsのテスト勉強をやり、まったく日の光を浴びぬままに一日が終わってしまった。「このゴージャスな秋の好天の下、四時からSachemのフィールドでdoggy play group(ワンちゃんといっしょに遊ぶ集まり)をやりましょう!」というメールが来ていたので、きっとさぞかしいい天気だったんでしょう。

Sachem Villageの我が家のすぐ脇には、芝を張った立派なサッカー・ラグビー・ソフトボールグラウンドがある。サッカー場などは、6−7面はあるだろうか。日本ではサッカー場を予約しようと思うと四苦八苦するが、ここでは予約などなしに行っても好きなだけ天然芝の上でプレーすることができる。サッカー好きにはたまらない環境でしょう。

しかし、野球場が一面もないのはどうしたわけだ。ここはフィールド・オブ・ドリームスの国ではなかったのか。やはり硬球しか存在しないこの国、明らかに野球は「するスポーツ」ではなく「見るスポーツ」であるようだ。「軟球」なるものを考案し、誰でも気軽にプレーできるようにした我が国民というのはその点素晴らしい工夫の持ち主である。

見るスポーツ、メジャーリーグのワールドシリーズ第二戦が今日行われたが、ランディ・ジョンソンの好投でDバックスが連勝した。さすがにワールドシリーズ、テレビ局も気合の入り方が違う。来年は是非ここでイチローを見たいものだ。

【Sachemのフィールド(何だかよく分からないでしょうが、とにかく広いです)】


10月29日(月)   サマータイム

終わっていたらしいです。サマータイムが。全然知らなかった。

できるだけ寝坊のリスクを減らしたい僕と隣人I氏は毎朝早く起きた方がモーニングコールをするという契約を結んでいるのだが(このへんがパートナー扱いされる所以か)、今日は8:15過ぎにI氏から電話がかかってきた。Statisticsの試験は8:30からである。二人揃って慌てて家を飛び出したところ、なんと車の窓が凍結している。運転席に座ってもまるで真っ白い繭の中にでもいるようで、とても運転できたものではない。「この一刻を争う時に」などと言いながら、それぞれ懸命に解凍作業をして学校へ向かったのであったが、その時世間様の時計はまだ7:15過ぎであったらしい。隣の隣に住んでいるロシア人学生ブラッドの車がまだあるので、おかしいとは思ったのだが。

日曜日からサマータイムが終了して時計の針が一時間遅れたとのこと。おかげさまで遅刻しないですんだのだが、もう少し寝れたものを。サマータイム導入の是非は日本でも結構議論されている。省力化にどれだけ貢献するかについての試算は、その立場によって計算に使用するAssumptionがまったく異なるようなので、容易には結論は出なかろう。しかし、効果はともかくとして、面倒くさい。皆が持っている時計の針をすべて一時間進めるだけでも国全体としてどえらいコストだ。公共の場にある時計もまだ直っていなかったりして混乱を招く。特需などで経済効果は期待できるだろうけど、単純に面倒くさいので反対です、私(笑)。

Statisticsの試験は何でも持ち込み可のOpen Book Examなので、簡単だった。

 

夕方、ダートマス大学の"The John Sloan Dickey Center for International Understanding"というところと、Tuckの"the Center for Asia and the Emerging Economies"というところが共同で開催していた日本の再生をテーマにしたパネル・ディスカッションを聞きに行った。

案内文曰く。

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REFORM IN JAPAN:  POLITICS, ECONOMICS, SECURITY

Japan is in trouble.

The post-World War II system that served Japan so well for 45 years has completely broken down.

Japan's economy, the second-largest in the world, has stagnated for a decade.  The long-dominant Liberal Democratic Party now relies on coalition partners to stay in power.  Japan has had 10 prime ministers in the last 11 years.  Pressure is growing inside and outside of Japan for the country to alter its pacifist constitution.

Where is Japan going?

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事実ではあれ、何となくアメリカ人に"Completely Broken"と断言されるとカチンときてしまうのは私だけでしょうか。パネルの内容自体は、日本人であればたいがい知っているような政治の現状、ここ数年の経済の動きなどに関するものであり、あまり聞くべきものはなかった。しかし、アメリカ人パネリストは実によく日本のことを知っている。河野太郎、塩崎恭久等の名前が注目すべき政治家の名前として上がっていた。

"LDP now relies on coalition partners to stay in power"と案内文にはあるが、そういえば、衆院では自民党が単独過半数を回復したのであった。

 

夜はまたもアイスホッケーの試合に参加。明日Economicsの試験を控えた一年生はさすがに参加が少なく、ディフェンスは3ラインしかできなかったため、思う存分プレーすることができた。しかし、試合はまたも2−3で負け。こんなことをしていて明日のEconomicsの試験は大丈夫なのか?まあ、Open Bookなので何とかなるだろう。


10月30日(火)    Final Exam終了

いや、何ともならなかった。いくらOpen Bookだからといって時間が無限にあるわけではない。限られた時間ではとてもすべて調べきれるものではないのだということを思い知った(今さらか?)。というわけでEconomicsの試験は完敗です。まあ、そんなことはどうでもいい。これにてFinal Examはすべて終了である。

今日の試験は教室が満員で入れず、一人でスタディルームで受けたため、皆とは違うルートで校舎の外に出たのだが、教室の外では二年生が並んではじめての試験を終えた一年生を拍手で迎えてくれたらしい。TUCKらしい素晴らしい儀式哉。その後は、ホールで学校が用意しておいてくれたシャンパンを飲んで試験終了を祝う。メールを見ているとそこかしこで試験終了を祝う大小のパーティーが行われているようである。

夜は同じSachem Villageに住む二年生のEさん夫妻宅で、「パートナー」I氏とともにすき焼きをご馳走になる。Eさんはアイスホッケーも同じチームであり、レジュメなども見てもらってアドバイスをいただくなど大変お世話になっているお方。いつも冷凍したごはんと缶詰の食事だという話を聞いてあまりにも不憫に思って食事に呼んでくれたのかもしれない。それにしても、ひさかたぶりのすき焼きと日本酒、本当においしかったです。

その後は日本人一年生が集まっての試験の打ち上げへ。さらに夜11時半からまたもアイスホッケーの練習に参加。そして、帰りに大学近くのパブで軽く飲み、さらに自宅で隣人I氏と少しだけ飲んで、この長い一日をしめくくった。

明日からは、Fall Term Bが始まるまで5日間のTerm Brake。ほとんどこれだけを楽しみにFall Term Aを乗り切ったようなものである。明日は、朝7時に起きてカナダのモントリオールに遊びに行く予定だ。


10月31日(水)    モントリオールでエアロスミス

朝8時に同級生T氏・T内氏と待ち合わせをし、モントリオールへ出発する。テロ以降、国境越えはかなりチェックが厳しくなっているという話だったのだが、検問所のチェックは拍子抜けするほどあっさりしたものであった。高速道路をひたすら北上し、モントリオールに着いたのは12時頃。

昼食後、とりあえず観光でも、ということでモントリオールオリンピックスタジアムにあるタワーへと向かった。大失敗なり。
灰色の空、灰色の建物、ほとんどいない観光客、やる気のない従業員、、、そこに存在しているだけで自分も「こっちの世界」に絡めとられてしまいそうな気がするくらいのナイスなスポットであった。どこか荒廃した未来都市のようでもある。失敗した巨大プロジェクトのなれの果てをまざまざと見せ付けられた。しかもきっちりと引導を渡さずに巨額の赤字を垂れ流しながらもオペレーションしつづけているところがすごい。観光客をここまでブルーにさせるスポットもそうそうあるまい。

 

一方で良いこともあった。チェックインの際にホテルの従業員(美人)から、今日このホテルのすぐ近くのアリーナでエアロスミスのコンサートがあると聞かされたのだ。しかも、席が空いている。値段も日本の相場から考えると格安。座席の場所も上々、とのこと。迷わず彼女に頼んでチケットを三枚手配してもらう。

あまりにもおいしい話に我々は集団詐欺にかかっているのではないか、と懸念しつつも会場へ。NHLのモントリオールカナディアンズのホームアリーナである会場は、開始時間間際になってもやけに空席が目立つ。

コンサート開始定刻になった瞬間、どう見てもエアロスミスではない兄ちゃんがタンバリン打ち鳴らしながらしゃしゃり出てきた時には一瞬「こりゃやられたか!」と思ったが、幸い彼は前座のバンドであった。長い兄ちゃんの前座が終わった後は、無事、エアロスミスのコンサートを深夜まで堪能することができた。


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