MBA留学日乗 2002年7月 | ホームへ | | 前月へ | | 翌月へ |
7月1日(月) フットボール・リテラシー
今日から7月。インターン最初の一ヶ月は本当にあっという間だった。今日もバタバタしているうちにあっという間に夜になっていた感じ。
一ヶ月にわたってつづいたW杯が終了し、テレビも新聞も「大会を振り返る」「○○選手、独占告白!」的な報道で溢れかえっている。
フーリガン脅威論に始まり、日本の初勝利、初の決勝トーナメント進出、道頓堀ダイブ、ベッカムに大騒ぎ、韓国ベスト4、判定疑惑、、、とピッチの外も含めて色々あった大会だった。96年、長い招致活動の末にほとんど日本開催に決まりかけていたW杯を土壇場の土壇場になって政治力で共催に持ち込まれた時は、「共催なんか冗談じゃない。返上してしまえ」などと言っていた僕であったが(そんな論調は決して少数派ではなかったと記憶しているが)、今となってはむしろ共催で良かった、とも思える。
アメリカから帰国してすぐテレビを見ていて驚いたことがある。それは、NHKの7時のニュースのトップで、「今日の紅白戦では、レギュラー組がビブスをつけてプレーし、トップ下に中田英寿選手が、中盤の左には三都主選手、小野選手は珍しく右サイドに入りました」というような原稿が何の注釈もなく読まれていたことだ。数年前だったら、NHKの7時のニュースで「中盤の左には」なんて言われて、果たして何割の人が理解しただろうか。老いも若きもが毎日毎日溢れんばかりのサッカー報道に接して、一流の試合をテレビで見た、間違いなくこの数ヶ月で日本の「フットボール・リテラシー」は上がったんだ、と思う。「サッカーを知らぬ俄かファンが増えて。。」などと嘆くなかれ。フットボールを愛する国民の多い国の代表は、必ず強くなるのです。
(しかし、自国でW杯が行われるというせっかくの機会に、サッカーを愛してやまぬ友人達、TUCKのT氏・LBSのOさん・IESEのL氏などが海外に留まっている無念さはいかばかりであろうか、などとふと思う。)
7月2日(火) 流通科学大学へ
しばらくつづいた梅雨空から、一転して夏空へ。暑い。暑すぎる。こんな真夏にスーツを着るなんて習慣はさっさとやめたほうがいい。と言いつつ、今日はスーツを着て出勤。社外の人と会うためである。
神戸に流通科学大学という大学がある。ダイエーの中内オーナーが創設したことで有名な大学だ。T’05のIさんが非常勤研究員として在籍している大学なのであるが、そこでIさんが師事するT教授にアポを取っていただき会いに行ってきたのだった。T教授はCRM関係のセミナーで基調講演などもしているので、現在僕がやっているプロジェクトに関連があるともいえる。しかし、プロジェクト・スペシフィックな話よりも一般的なマーケティング論などを聞ければ、と思い会っていただいた。
話してみての感想----世の中には凄い人間がいるもんだ。マーケティングの学者でなくても何をやっていても第一人者になっただろう。と同時に自分の勉強不足も痛感した。
炎天下、汗をかきながらキャンパスを通り抜けて駅まで歩く。キャンパスを歩いているのは、「大学生」とはとても思えない若者ばかり。
帰社後は夜遅くまで残業。だんだんと時間が圧迫され始めてきた。
7月3日(水) キャリア
日本・欧州地域のHRを統括するエグゼクティブ・ディレクターがロンドンから来日したというので、HR主催のインターン生とのランチョンミーティング。またしても、「皆さんはリーダーにならないと駄目です。ミドルマネージャーはいりません」という例の言葉。色んな機会で感じることだが、この会社のマネジメントが発する言葉は非常にconsistencyが高い。
午後から製造設備を見学する。同じ工場でも自動車の工場とは似ても似つかぬ製造設備である。青龍刀と抜き身の短刀のような肌触りの違い。
夜帰社してからプレゼン資料やいくつかの企画書をせっせと作る。
最近帰宅時間が徐々に遅くなってきた。とはいえ、まだまだI−Bank組に比べれば恵まれている方だ。東京のI−BankでサマーをやっているTUCKのTさんは初日から深夜まで働いていたそうであるし、NYで働いているPaulから届いたメールによると、NYのI−Bank組は皆平日15時間+土日もほとんど働いているとか。同級生達が、ライフスタイルも含めて卒業後のキャリアを疑似体験するこの夏、彼らの話を聞くことは色々と自分の将来のキャリアについて考える契機にもなる。そもそも自分は何のために生きていくのか。欲しいものを手に入れるためには、やはり別の何かを犠牲にせざるをえないのか。この夏は、ビジネススクールに入学してから最も深くそのような問いと向かい合う期間となるだろう。
7月4日(木) 中間報告
部門の役員に中間報告をする。これまでやってきたこと、これからやるつもりでいることを説明する僕に、"Good" "Perfect"とうなずいていた彼だったが、僕が「今後の当社のCRMストラテジーに関してのBig Pictureを提示したいと思います。プレゼン全体に占める時間はだいたい20%程度でしょう」と言った瞬間、"No! Too much!"と言下に却下。「そんなものは、もう既に戦略コンサルティングファーム2社に大金を払ってやってもらってるんだ。君がやる必要はない。たとえどんなにいい絵が描けても、単なるピクチャーじゃお土産にはならない。我々ははっきりしたTake awayが欲しいんだ。Long term pig pictureじゃなくて、たった今何をすればいいか、だ。今すぐ我々が何をすべきなのか、具体的なプランを残していってくれ。誰もが君が残したプランをそのままやろう、と思えるような環境を作っていってくれ。そのためには、君がいなくなるまでにどれだけ多くの人を君のプロジェクトに巻き込むか、が勝負なんだ。いいか、アカデミックなことはいらないぞ!」
だんだん胃が痛くなってきた(笑)。しかし、要は泥臭いことをとことんやれ、ということだ。やるべきことがはっきりしただけ、気は楽になった。あとは残された後半戦、とことん泥臭いことをやって、驚くような結果を残す所存。
夜は、僕が席を置かせてもらっている部署に新しく転職してきた方の歓迎会に参加。
7月5日(金) 名古屋へ
朝5時に起きて新幹線で名古屋へ向かう。フィールド調査第二弾である。(ちなみに来週は札幌・秋田・名古屋・東京、再来週は大阪・広島へ。がんがんフィールド調査を入れていたのだが、元々少ない部門の出張旅費を考えるとこれが限界か。)
午前中は支店の人々にインタビュー、午後から7件の顧客を同行訪問する。うち1件の新規開拓先では時間帯と方法を変えて二度アタックしたものの、見事に二回とも門前払いを食らう。しかし、全体としては非常に意味のある意見を多くもらえた。どういう形でプロジェクトに反映してやるか、なかなかわくわくする。
セールスの人と栄(さかえ)で飲もう、という魅力的な誘いを悩んだ末に断って午後10時過ぎに神戸に帰る。会社で仕事をして帰宅。
ところで。途中某所で会った某顧客(超美人)との会話。
「へー、アメリカに留学してるんですか。なんて言う大学?」
「ダートマスっていうんですよ」
「ダ。。。?」
「ダートマス」
「ふーん。。。。(聞いたことないな、そんな大学。三流大学?)」
何とかして日本で「ダートマス」の知名度を上げられんもんか?
7月6日(土) 理髪店へ
日本に来てから初めて髪を切った。日本で髪を切るなら、やはりアメリカにはない剃顔のある床屋さんでなくては、と思いマンション近くのカット2000円也の格安理髪店へ。覚えている限り、武蔵小杉に住んでいた頃に行って以来「理髪店」には行ったことがなかったので、おそらく7年ぶりの床屋なのだ。剃顔とマッサージつき、という久しぶりの日本の床屋サービスは気持ちよかった。来年の帰国後も癖になりそうな予感。
河島英五似の野太い声でしゃべるお兄さんとの会話が面白かった。理髪店には同業者組合があり、組合加入店は3800円だかの最低価格を守らなければならないのだという。今日行った店は当然組合には非加入。かつては組合加入率が9割を大きく上回るような時代もあり、低価格でサービスを提供する店は『大衆理容』と呼ばれ、業界のはみ出しものとして一段低く見られていたとか。しかし、最近では若手を中心として組合に加入せずに自由なプライシングをする店が増えているのだそうだ。
「組合に入ってる連中と話してると話合わんのですよ。『うちんとこはお客様に最高のサービスを提供してるんや。一人平均1時間10分もかけとんねん。お前んとこ何分や?』とか言う奴がおるんですよ。あほちゃうか?思うんですけどね。お客さんの中には急いでる方もいてはんねん。時間かけてる、てその分お前の人件費が乗ってるだけとちゃうんかい。早くて、ええ腕を見せるのが、サービスちゃうんかい、言うても、きょとん、とした顔してるんですよね。こらあかんわ、と」
「年寄りには悪いけど、何の努力もせんと、経営苦しくなってきたら『最低価格引き上げよう』とか組合に働きかけるような年寄りは、店たたんでもろた方がお客さんのためにもええんですよ。おっさんはよやめや、言いたなるんです」
彼が語るインテリジェンス(競合調査)の実例も非常に興味深かった。
自由に競争して、できる努力をして、適正な価格は消費者に決めてもらう、こんな当たり前のことができないでいる業界が日本の中にはまだまだあるのだろう、と思う。しかし、この業界も変わりつつあるようだ。
今日行った店は店舗施設も綺麗だし、サービスもしっかりしてた。何よりお兄ちゃんの会話が面白くてそれで2000円だ。アメリカだったらたっぷりチップをはずむところだが、誇り高き日本の床屋は、チップなど馬鹿にされたと思うだろう。
まったく関係ない話題をひとつ。住民基本台帳ネットワーク(住基ネットワーク)が、来月から稼動する予定である。システム構築が遅れているとかで延期も議論されていたようだが、「計画どおり実施する」と先日政府は発表した。住民全員に11桁の番号を割り当てて、地方公共団体と中央政府をネットワークでつないで個人情報を流通させる、というこのネットワークのことを、果たしてどれだけの国民が知っているだろうか。果たして政府が言うとおり、「プライバシー情報に対するセキュリティは万全」なのだろうか。日本全国の地方公共団体を結ぶような過去に例のない巨大ネットワークに、一箇所のセキュリティホールも作らないなんて芸当が可能だなんて、とても思えない。個人的には稼動直前になって延期、となるのでは、と思っているが、たとえ最終的に稼動したとしてもネットワークではエラーが頻発し、世界中のハッカーから侵入され、個人情報は漏れまくり、大騒ぎになるのではないか。(ネットワークセキュリティの専門家の方、是非ご意見聞かせてください。)
何よりも、こんなにも重大なことがメディアでもあまり報道されず、さしたる抵抗も受けずに、国民のほとんどは知りさえせず、いつのまにか始まってしまいそうになっているという、事実。この国はつくづく不思議な国だと思う。あまりにも不自然なメディアの静けさ、裏に何かあるのか?
7月7日(日) 宝塚へ
5月にハノーバーまではるばるキャンパスビジットに来られていたIご夫妻。「日本に帰ったらまたお会いしましょう」と話していたのであるが、七夕の今日、宝塚の自宅に食事に招待していただいたのであった。先日バーベキューもご一緒したFさんと一緒に宝塚の山の上にあるIさん夫妻宅へ。
おいしい料理の数々を昼過ぎから夜中までひたすらご馳走になり、日本酒・ワインをがぶがぶとおいしく頂戴し、最後はいい大人達が揃って深夜の公園で花火をし、本当に心から休日の一日を満喫させてもらった。
Iさんとは残念ながらTUCKの同窓生にはなれなかったのだけれど、キャンパスビジットをきっかけとしてこうして知り合えたことをとてもありがたいことだと感じ、感謝している。
7月8日(月) マネジメントとディナーの日
10週間のインターンも今日から後半戦へ。明日から出張でミーティングを詰め込んでいるため、何だかバタバタの一日だ。
夕方から二時間ほど会社の経営陣とインターンとの間のパネルディスカッション。さらにチャイニーズレストランへ移動してのディナー。マネジメント層のさまざまな人々と話ができる貴重な機会。
そのまま二次会へと繰り出すインターン仲間を尻目に、明日からの出張準備が終わっていない僕は会社へ戻って準備に勤しむ。そして午後11時前に仕事を終了してこれから参加しようかと悩みに悩む。受話器の向こうからは楽しそうな声が。しかし、明日は5時起きで伊丹空港へ向かわねばならないことを思い出し、すんでのところで思いとどまった。帰宅して三日分のワイシャツにアイロンをかけながら、ああやっぱり行かなくてよかった、とあらためて思う。こういうまともな判断ができるなんて大人になったもんだな自分自身、と自分を褒める。いや、そもそも大人はこういう時迷わないんじゃないのか。
7月9日(火) 北国へ出張
早朝にリムジンバスで伊丹空港へ。一時間ちょっとのフライトで着いた札幌の気温は20度、神戸に比べると湿度も低くからっとしている。スーツが体にまとわりつき、シャツが汗で濡れて重くなるような神戸とはまるで違う国だ。気候、風景などハノーバーを思い出させる土地ではある。上着を着て、重い出張カバンを手に下げても、汗ばまずに歩けるという事実が、それだけで気分を穏やかにさせるのだった。
午後から札幌の顧客先を訪問し、夜飛行機で秋田入り。札幌ほどではないが、ここも涼しい。
夜は今日一日行動を共にした二名の方と秋田名物比内地鶏を食べさせる店へ。地鶏のたたき、レバー、ばくらい、かにみそ、など日本の食をここぞとばかり食す。言葉を失う。きんきんに冷えた秋田の地酒を飲む。ふたたび言葉もなし。地方都市に行くたびに、日本の食文化の豊かさを思う。
台風六号が近づいてきている。テレビニュースで繰り返し伝えられる台風の進路予測を眺めて、眠る。
7月10日(水) 台風の中、西へ東へ
台風の接近で、岐阜県では非難勧告が出ている、というニュースを見てからホテルを出る。秋田も雨だ。
午前中は秋田市内で二件の顧客を訪問し、さまざまな話を聞く。昼過ぎに雨の中をタクシーで秋田空港へ。東京行きの飛行機は既に何便か欠航している。目的地の名古屋に近い岐阜では大雨で死者も出ている旨ロビーのテレビで繰り返し報道されている。そんな中を果たして飛行機が名古屋へ飛ぶのかどうか訝っていたが、飛行機は特に何事もないかのような風情で離陸した。
飛行機の激しい揺れで少し吐き気を催しながらも名古屋市内の顧客へ。ここで一時間強話をした後、お次は新幹線で東京だ。
名古屋駅には各局のテレビクルーが集まっている。「新幹線のストップで途方に暮れて床に座り込む利用客」あるいは「ぐちゃぐちゃに乱れたダイヤを象徴する電光掲示板」はたまた「駅員に食ってかかる利用客と懸命になだめる駅員」といった紋切り型の映像を毎度のごとくカメラに収めようとしているのだろう。名古屋以西の新幹線は完全にストップしているらしい。名古屋・東京間もしばらく止まっていたものがようやく動き始めたところらしかった。
そもそもの定刻が何時だったのかも不明な東京行きの「こだま」に何とか乗りこむ。途中、予定外の場所での停車を繰り返しながらも、午後11時過ぎに列車は東京駅に着いた。
台風のおかげで長い一日だった。今朝秋田のホテルで目覚めたのは遠い昔のことのようだった。体じゅうを覆う疲労を感じながら、就寝。
7月11日(木) 出張終了
台風一過で東京の街は快晴である。最高気温は35度にまで上がる、とニュースが繰り返す。
うだるような暑さの中を午前中八重洲で一件、午後三軒茶屋で一件の顧客を訪問する。そして夕方六時頃にようやく今回の出張のすべての用事を終了し、新幹線で帰路についた。三宮のマンションに辿りついたのは午後10時過ぎ。
札幌、秋田、名古屋、東京、と三日間で六件の顧客を訪問した今回の出張からはさまざまなものを得た。しかし、さすがにこのスケジュールは少し無理があったか。疲労困憊である。
ああ疲れた、何か冷たいもんでも飲むか、と冷蔵庫を開けると、どうしたことか冷蔵庫の中が異常な高熱になっている。外出中に故障したらしかった。最近は日本製冷蔵庫でも故障するのか。
7月12日(金) 初給与
三日間外出していたため、今日はさまざまなミーティングが集中している。したがってなかなかもって仕事の効率が上がらず。残業して一気に懸案事項を片付けるつもりだったのだが、出張前にひいていた風邪が少し悪化していたので、早めに帰宅して睡眠を取ることにした。
ところでサマーインターンの一回目の給料が口座に振り込まれていた。ちょうど一年前に会社を退職してから減りつづけてきていた僕のBSの現預金勘定の借方に初めて金額が記帳されたのである。働いてお金を稼ぐという当たり前のことの大切さを実感する。一年間も離れていると、こんな瑣末なことでさえとても新鮮だったりする。
7月13日(土) 休日出勤と小倉隆史
昼頃電気屋に冷蔵庫の修理に来てもらうが、大物部品がイカれてしまっているのでメーカーでないと手が出ないとのこと。結局来週月曜日にメーカーの担当者があらためて修理に来ることになった。
昼過ぎから出社し、昨日中途で切り上げた仕事に取りかかる。来週行う会議のプレゼン資料などを作る。
夜七時に仕事を切り上げ、ふらっと一人で神戸ユニバ記念競技場へ向かい、Jリーグのヴィッセル神戸対コンサドーレ札幌戦を観戦。
やばいぞヴィッセル。ホームなのにヴィッセルを応援する人々よりもコンサドーレを応援する人々の方がパワフルだぞ。札幌サポーター、数も多いし元気である。ハーフタイムに焼きそばの行列に一緒に並んだおばちゃんは札幌から来たらしい。そもそもせっかく神戸ウィングスタジアムという素晴らしいサッカー専用スタジアムを神戸に作ったのに、なぜいまだに陸上トラック付きのユニバなのか?
ところで現在のヴィッセルにはビッグネームがこれでもかと揃っていることをご存知だろうか。カズ、岡野、城、平野、望月、山口貴、三浦泰に播戸までいる。これじゃ数年前の日本代表ではないか。しかも、そのほとんどがFWと攻撃的MFであるところが、編成の意図が読めなくてよい。第三者として見る分にはなんだか馬鹿っぽくてよろしい(本当にこんなんでいいのか?)。
一方のコンサドーレにもFWに”モンスター”小倉がいた。間もなく日本代表に選ばれるだろう山瀬とトップに並んで(あるいは山瀬の少し前に)いる。想像していたことだが、小倉の動きにはまったく切れがなくなっていて見ていて切なくなった。後半になると、自らのイメージと実際の動きのズレに我慢の臨界点を超えたのか、明らかに手を抜き始めた。味方のコーナーキックの瞬間にも、集中力を切って下を向いたりしている。案の定しばらくして交代させられると、身もだえするようにタオルで顔をこすって地面に倒れこんだ。ああ、何だよ、何でこんなプレーしかできねえんだよ、と叫んでいるように見えた。一方で山瀬のプレーは切れがあった。速くて、ヴィッセルサイドから見ていると危険な雰囲気、嫌な雰囲気が体中から充満していた。今が旬の山瀬と、坂道を転げ落ちてあがいている小倉と。かつて一緒にプレーする誰もを(中田さえもを)引き立て役にしてしまった小倉のプレーが、今はその落差によって山瀬の魅力を引き立てる。スポーツはなんて残酷なのか。
頑張れ小倉隆史。
7月14日(日) ジュンク堂と明石城
ジュンク堂にてベンチに座って植田正也著「電通『鬼十則』-広告の鬼・吉田秀雄からのメッセージ」と安原喜弘著「中原中也の手紙」を読む。「電通鬼十則」とは知る人ぞ知る電通の吉田元社長の作った社員のための行動規範であり、非常に優れたものであるが、いかんせんこの本の筆者の筆致が、そして例示が陳腐すぎる。これはやはりただ原文のみを読み、己の体験とつきあわせて自分の頭で考えるのがよろしかろう。「中原中也の手紙」は素晴らしい。中也的世界が迫り来ると同時に10数年前の自分的世界もまた迫りくる。たまりません。で、結局のところ買ったのは幸田真音「日本国債」と櫻井よしこの新刊。
買った本を持って列車で明石へ。明石駅前には明石城址公園が広がっている。天守閣こそないが、二つの櫓と城壁と緑の芝生の美しい城だ。遠目の城を眺め、日本の城は本当に美しいなあ、とため息が出る。実用的な美、だ。明石城も結局一度も戦に使用されることはなかったのだが、堀の幅も広く、城壁も高く、攻めにくそうな城である。
芝生の上のベンチでひとしきり本を読んでから帰ってきた。
7月15日(月) 新大阪にて一日過ごす
朝早めに家を出て、新大阪へ向かう。新大阪駅界隈も僕の知っている頃からはまったく変わってしまっていて、目当てのビルにたどり着くまでに数十分も道に迷ってしまった。
朝から晩まで新大阪にある某セールスオフィスにて営業サポートスタッフの業務実態調査を行う。極めて地味な作業でもあり、なおかつ休憩のとれない状態がずっとつづくので、なかなか精神的に疲れた。また、ネガティブな批判発言を穴だらけのロジックで繰り返すスタッフに、徹底的に論破してやりたい誘惑と心の中で戦いながらも、「修行修行」と言い聞かせて笑顔で応対。こんなことで心を粟立てておるようでは、まだまだでござる。
しかし、とにかくこれで必要最低限のフィールドデータは揃った(本当はもう少しフィールドをまわりたかったが、贅沢は言うまい)。あとはファイナルプレゼンまで残された半月で、ロジックを磨き上げること、である。
ところで、先月末に「帰国延期」と一旦決定した妻子であったが、来月の初旬に帰国することになった。双方の実家が、帰国費用の援助を申し出てくれたためである。何ともはや。。。感謝。やはり会えるとなると嬉しいものなり。
7月16日(火) ビジネススクールで得たもの
昨日の調査の結果を早速分析する。非常に面白いレポートができたので、早速関係者に報告する。今回の分析では、TUCKのモデリングで学んだExcelスキルかなり役に立った。「こんなこと留学前には絶対無理だったよな」なと嬉しく思いつつ作業する。逆に言えば、本件がそれだけ印象に残るほど、普段は「ビジネススクールで得たスキルが活躍」する機会は少ないとも言えるのだろうか。いやいや、そういったものはえてして目立たないだけだ(と思いたい)。よく思い出してみれば、留学前の自分はパワーポイントのスキルも貧弱だったし、プレゼン慣れもしていなかったし、外国人役員と今みたいに気楽に話すなんてとてもできなかった。Excel、パワーポイント、英語。。。。。どうも得たものが地味だな。
TUCKのMBAオフィスのエイミーからメールがあった。「Hiヒロシ、サマーはどう?早いもので、この間あなたが入学したと思っていたらもう次の一年生が入ってくるのね。みんな心細いはずだから色々とサポートしてあげてね」というもの。こうやって上級生皆にサポート依頼のメールを出しているのだろう、と思うと何だか彼女の心遣いに感動した。去年も我々のために同様の依頼をしてまわっていたのだろう。誰に頼まれたわけでもないのに、それぞれがこうして気を遣ってくれる彼女たちTUCKのスタッフ達。金をもらっても必要以上のことはしようとしないファーストフードの従業員達と、これが同じアメリカ人だとはとても信じられないのである。
ところで、実は当日乗では「一日にふたつを超えるテーマは書かない」という、まったくもってどうでもいい不文律を自分に課しているのであるが、今日はそれを破らせていただいて三つ目の話題を少し。僕は昨年の7月15日に会社を退職したので、今日で無職となって一周年なのだ。そして、会社の後輩K君も昨日付で同社を退職したそうである。彼は僕と境遇が非常に近い男、昨年の七夕の日乗で「彼は極めて優秀な男であるので、来年の今ごろにはきっと良い結果が出ていると信じている」と書いた男だ。見事志望していたB−Schoolへ合格を果たし、このたび晴れて無職におなりあそばしたのである。あらためてプータローおめでとう!!いっちょやりますか。
7月17日(水) 鈍行列車で行こう
「都心の異常気象」「ゲリラ的驟雨」「ヒートアイランド現象の影響か」「日本が亜熱帯化している」というキーワードを目にするようになって数年たつが、今日は朝晩ともに、それを絵に描いたような驟雨があった。窓越しに外を眺めていると、アスファルトを叩きつける大量の雨滴が腹の底を震わせるような音を生み出している。地の底から湧き上がるような、尋常ではない音だ。
夜9時頃雨が降り始めた時、僕は自宅まであと数十メートルの場所にいた。「これは一気にくるな」と思い、走ってマンションに駆け込んだ瞬間にバケツをひっくり返したような雨になった。そして帰宅して本を読み始めた頃にはにもう雨はやんでいるのだ。
本を読むといえば、僕は昔から本を読むスピードが非常に早かった。日曜日に買った「日本国債」上下巻は月曜日の帰宅途中の電車の中でもう読み終えてしまった(この小説、良い部分と全然駄目な部分とが見事に同居している不思議な小説です)。読書のスピードが速いのは時間の有効活用という点では得することが多いのだが、見方を変えると困ったことでもある。本を買う金がない、自宅にもう未読の本がない、図書館にも行く時間がない、という状況においては、あっという間に読むべきものがなくなってしまうのである。同じ本なのに楽しめる時間が短いのだ。いつもあっという間に食事をすましてしまう僕が(僕は通常の食事で自分よりも速く飯を食う人に会ったことがない)、ゆっくり食べる人に比べると同じ食事なのに自分だけ楽しめていない気になるのと同じである。
価値観の転換。「スピード」は必ずしも善ではない。飛行機で北海道まで飛ぶ時間の方が、電車でのんびりと行く時間よりも「有効に活用」されているだなんて言えないのだ。
そんなわけで、今読んでいる本はのんびり、じっくり、行きつもどりつ、鈍行列車である。(でも、慣れないから辛い。。。)
7月18日(木) 心が乱される記事
神戸に来てから会うようになったアプリカントのMさんと三宮駅前で飲む。途中からMさんの婚約者も参加されて、楽しい会でありました。
朝は読み飛ばしていた新聞記事(主に社会面)に、帰宅してからじっくりと目を通す。相変わらず気が滅入る記事が多い。日本のメディアがあえてペシミスティックな話題を好んで記事にする傾向があるのか、それとも実際にそういった事件が多いだけなのか、は分からない。しかし、アメリカで隅から隅まで新聞を読んでいても、こんなに心がかき乱されることはないのに、どうして日本の新聞を読むとこんな思いをするのだろう、と思う。
大教大池田小事件の犯人の「子供達に不条理を分からせてやりたかった」という言葉。育児放棄に関する記事。繰り返される幼児虐待、そして置き去り。。。。
今日見かけた記事の中には、父親が「漫画喫茶」で漫画を読んでいる間、一歳数ヶ月の男児を締め切った車の中に置き去りにして、熱中症で死亡させた、という事件に関するものがあった。真夏、炎天下、外気温は三十数度であった。車の窓は締め切り、クーラーも切っていた。。。。馬鹿かお前!!人の親のくせに、そんなことも分からないのか。
「車の中は55度まで気温が上がっていた」という文字。こんな記事をとても平静な気分で読めない。蒸し風呂のような車内で命を落とすまでの間に子供は、体じゅうに汗をかいてどれだけ精一杯泣いただろう。どれだけ泣いて、親を求めて、そして最後に力尽きただろう。なのに、バカ親はクーラーの効いた漫画喫茶で、漫画を読んでいたのだ。子供にとっては、どんな親だって親だけが唯一の頼りなのに。
何でこの罪が懲役一年三ヶ月なんだ。何でしかも執行猶予付きなんだ。日本の刑法はこの種の犯罪に軽すぎる。
7月19日(金) 週の終わり
7週目の終わり、インターンも残り3週となった。終業後、三宮で知人との飲み会に参加する。日付が変わってから帰宅し、ソファに横になってゴルフの全英オープンを見ているうちに、気が付いたら眠っていたらしく、小鳥がさえずり始めていた。
一ヶ月以上前にいくつか興味のあるケースをHBSから購入していたのだが、いつまでたっても日本に届かない。問い合わせをしても、一向に要領をえない。米国にいるとさして気にならないこのアメリカン・サービス・クオリティだが、日本にいるとやや苛々してしまうのはなぜだろうか。
7月20日(土) お呼ばれ
東大阪市内にあるT’05のIさん夫妻の自宅へ食事へお呼ばれし、出かける。僕の顔をじっと睨みつける、号泣する、を交互に繰り返して僕を切なくさせていたIさん家の赤ちゃんなのであったが、三時間以上いて最後にようやく抱っこさせてくれた。久しぶりの1歳前の赤ちゃんの感触。ああ、娘もこんなだったなあ、と思う。
三歳になった今の娘とは似ても似つかぬI家の赤ちゃんなのだが、見ていると娘に会いたくなるのはなぜだろう。
奥様の心づくしのおいしい料理の数々をいただいて、帰路につく。本当にご馳走さまでした。
7月21日(日) 須磨ビーチ
出勤しようか否かと悩んでいた日曜日であるが、窓の外を見ると太陽がじりじりと照りつけている。結局インターン仲間が出かけていた須磨海岸に途中から合流することに。久しぶりに(新婚旅行以来か)海水浴を楽しんだ。
海水浴後は、電車で六甲道まで移動し、温泉を利用した銭湯に浸かり、さっぱりした後で「ひやしあめ」を飲む。アメリカでは味わえぬ広い風呂。そして、風呂上りにジュースなどを飲みつつ涼む人々。ああ、素晴らしき哉、日本の銭湯。素晴らしき哉、日本の夏。
さらに途中から合流したインターン仲間などと韓国料理屋で遅くまで夕食。
夏を心一杯楽しんだ日曜日であったが、お陰でプロジェクトの遅れは取り戻せなかった。そして気が付いたら四日連続で飲んでいるのだった。さて、明日からはネジをまいて頑張りますか。
7月22日(月) 研究会へ
一昨日食事にお呼ばれしたIさんの会社が主催する某研究会の様子を見学すべく午後から大阪へ出かけた。しかし、暑い。異常な暑さ。外を歩くと熱気が顔のまわりにまとわりつき、ズボンの裾からも入り込んでくる。あっという間に汗が噴き出してくる。
研究会の内容は、直接サマーで行っている仕事の内容と関連はないものの、非常に興味深かった。
夜、三宮に戻って会社で仕事。そして、合間にネットでニュースを検索していて、驚きのニュースに遭遇する。何と現在サマーインターンをしている会社が英国の某企業により買収を検討されている、というもの。実は従前から買収の噂が絶えなかったのであるが、ついにきたか、という感がある。先週巨大合併を発表した同業他社の株価は発表直後に下落した。僕が以前勤務していた会社はいまだに巨大合併の負の遺産と戦いつづけ、疲弊している。そして、「メガバンク」は----。
技術の高度化により研究開発コスト・開発リスクが増大した、それによって競争力ある製品を開発するための最低企業規模・クリティカルマスは加速度的に増大している----色んな業界で判で押したように聞かれるロジック。さて、それは本当に真実なのか?M&Aを仕掛けたい投資銀行に踊らされていないか?数年前、「400万台クラブ」などという言葉を自動車産業のクリティカルマスとして声高に叫んでいたアナリストは今何を言っているか。
いずれにせよ、僕にとっては色んな意味で注視しなければいけない案件だ。
7月23日(火) 日本でケースを読む
先日「HBSからケースが届かない」と書いたところ、昨日一ヶ月近くかけてようやく郵便物が神戸のマンションまで届いた。まあ、だいたい、こういうもんなのだ。あそこで文句を書いたから届いたんだ、などと非論理的な理由づけさえしたりする。「非論理的」で思い出したが、人間がいかに非論理的生き物であるかについては、木村剛氏著「投資戦略の発想法」の中で延々と例証されており、なかなか面白いです。
さて、届いたケースを早速読んでみた。面白かった。普段読むよりも数段面白かった。自分で興味のある題材だけ選んで購入した、ということももちろんあるが、それ以上に時間的制約の違い、アウトプットに対する精神的プレッシャーの違いによるものが大きそうだ。学期中は、それこそ一分一秒でも速く読みたい、と血走った目をしながら文章を走り読みしていた。電子辞書を引く時間も惜しいのでcriticalでない部分はほとんどguessで飛ばしていく。そして基本的な事柄だけは落とさぬよう、さらに同級生と少し違った視点で切り口を見つけられるよう、書き込み、マーカーを引き、PCにメモをまとめていく。一日に読むケースも複数あり、サイドリーディングもアサインメントもあり、という状況では、とにかく"Intense"という表現がぴったりくるような心理状態でケースを読まざるをえない。
翻って現在、ソファに座り、ビールを飲みながら、時間の制約のない中で読むケース。どこにもマーカーを引いたり、メモをまとめる必要もない。分からない表現があればきちんと辞書で調べてから前へ進む。これがおもしろくないはずがあろうか。
ところでどうでもいいことであるが、僕にとってはほとんど「ケースを読むシチュエーション=雪のハノーバー」なのである。もちろん30度を超える気温の中でケースを読んだことなど一度もない。したがって、内容がいかに面白かろうとも、目の前にあるケースと周囲の環境とのギャップについてはどうにも違和感を拭いきれない真夏の夜なのである。
HBSのケースはここでオンラインで買えます。一部$6.5と非常に良心的な値段なのでお勧めであります。特にアプリカントの方などリーディングの練習も兼ねていいかもしれません。
7月24日(水) インターン仲間
ファイナルプレゼンが早くも来週末に迫ってきており、プレゼンの準備も佳境に入りつつある。ここ数日でかなりマテリアルの準備も進み出してきた。骨格が出来上がるまでもう少しだ。
夜、一旦オフィスを出てインターン仲間二人と会社の近くの店で夕食をとる。とんかつを食いつつビジネスアイデアなどを語っているうちに気が付いたら一時間半が経っていた。
現在の会社でサマーインターンをしている(あるいはこれからする)MBA学生は全部で12名。ChicagoX2、RochesterX2、IndianaX2、Purdue、Michigan、Tuck、UNC、Thunderbird、Kelloggといった学校から集まった人々だ。皆、面白くて優秀。昼間は真面目に仕事をし、そして夜はとてつもなくバカ。彼らとの出会いは、本当に貴重な出会いだったなあ、とまだインターンが終わったわけでもないのに思うのだ。
ちなみに某校の某氏はこのホームページをお持ちのお方である。面白すぎるHPです。しかし、「某さんはHPがあまりにも変態っぽいので会った時の印象は意外に真面目に感じた。でも橋口さんはHPは真面目なのに。。。(以下省略)」という同じ内容のことをここ一週間に三名から言われたのはいったいどういうことだろうか。そんなにこのHPの内容は真面目かなあ。あくまで本当の自分をさらけ出してるだけなんですけど(少し偽りありか)。
7月25日(木) 英語力は向上したか?
ミーティング、プレゼン準備、その繰り返し。通常業務の方も提案していたことが色々と実際に動き始めたので、かなり忙しくなった。しかし、動き始めたと思ったら、もう引き継ぎのための手配をしなければいけないのである。正直、少し残念。深夜まで残業してプレゼン用資料を作りこむ。
今日のミーティングのほとんどは外国人とのマンツーマン。最近ミーティングなどで英語を使う機会が多いのだが、なぜかこっちに来てから英語力(特にリスニング力)が向上したように感じることが多い。英語に触れる機会はアメリカに住んでいた時に比べると激減しているのに、奇妙なことである。しかし、思い出してみると昨年末に日本に帰国した時にも同じ感覚を得たのだった。なぜか。ひとつは、日本在住の外国人は皆、英語の速度を「日本国内仕様」に落としてしゃべっている、ということが挙げられる。渡米後一年近くもたったのに、英語力がいまだに「できる」とは言い切れない微妙なレベルに留まっている僕にとっては、このわずかな速度の違いでさえ結構大きい。さらに、オフィスの中では誰もビジネススクールで学生同士が使うようなスラングを使わないために、意味が掴みやすいということもあるだろう。実際、「聞き取れない」「聞き取れても意味が分からない」という両方の問題ともが、今はほとんどないのだ。これがどんなに気分に余裕をもたらしてくれることか。さらには、他にも隠された理由もあるのではないか、と思っている。英語のシャワーと日本語のシャワーの切り替えが、脳に良い刺激を与えている、とか。もっとも、スピーキング力の方には上記いずれの理由にせよ、残念ながらあまり影響を及ぼしていないようであるが。
今日妻のHPを読んでいると、娘がドアの取り替えに来た兄ちゃんに”Are you OK?”と言ったとか。信じられない。
7月26日(金) 部門の飲み会
午前中、スーパーバイザーに来週のfinal presentationの内容について詳しく説明し、OKを得る。この8週間にやってきたことがすべて凝縮されたプレゼンなので、ストーリーを説明していると色々と調査の過程などが思い出されてくる。このスーパーバイザーの下で現在のプロジェクトに従事するのも、残すところわずかに二週間。「何も面倒みてあげていないのに、一人で本当によくやってるよね」と言われたが、彼女が陰で僕のことを担当役員にプロモーションするために色々としてくれていることを実は知っているのだった。転送の転送でまわってきたメールなどを読んで、「こんなプロモーションをしてくれていたのか」と感激したことも数度。何とか最後の二週間で報恩したい、と思う。
夜は部門の人々と企画していた飲み会へ。女性が圧倒的に多い部署なので、僕は「黒一点」である。普段ほとんど話せなかった人とも話が出来て楽しい会だった。二次会でカラオケへ出かけるも、下品な芸などは当然すべて封印、である。深夜の三宮の街をのんびりと歩いて帰宅。
7月27日(土) 休日出勤とセンチメンタリティ
午後三時過ぎまでひたすら眠る、眠る。
プレゼン前の最後の週末である今週末は土日どちらも出勤してプレゼン準備に精を出す予定だ。今日も四時過ぎに会社に出かけて深夜までプレゼン資料などをせっせと作った。
深夜、コンビニで弁当を買ってテレビを見ながら食す。「和泉元弥の大移動」とかいう意味不明のテーマについて、テレビ局がヘリなどを出して報道している模様が映されている。憤りを覚えるほど、くだらん。そろそろコンビニ弁当にも飽きてきたな、などと思いながら黙々と弁当を完食。
ちょうど一週間後には家族がやってきて神戸での一人暮らしも終了するのであるが、一人で暮らしていると色々とものを考える機会が多い。そして一方ではセンチメンタリティの入り込む余地も大きい。人間はそもそもセンチメンタルな生き物、であるからこそ共に生きる仲間を求める生き物、である。家族といると忘れている、ある種の寂しさや切なさといった感覚を一人で暮らしていると少しだけ思い出すのだ。
僕は年長の人々に昔話を聞くのが好きである。特に耳毛の伸びているような(あくまでイメージ)おっさんに、恋愛の話などを聞くことが。どんな人だって、若い頃には切ない恋愛を経験している。胸が苦しくなるような思いをしている。たとえ、今どんなに耳毛が伸びていようが、髪の毛がバーコードだろうか、脂ぎっていようが(いずれもイメージ)、社会的地位がどんなに高かろうが、誰だって切ない思いに浸りきった頃があったのだ。そしてそれぞれが過ごしてきた時間を思うと、どんな人だっていとおしく思えてくるのだ。
間もなく終わる一人暮らし、ふと思い出すセンチメンタリティ、そんなものの中でぼんやりと考えるのだった。
7月28日(日) また休日出勤
関西地方はここ数日最高気温が35度を超える日がつづいているが、今日もまた歩いていて頭がぼーっとするような暑さ。暑すぎるよ。プールにでも行って涼みたいところだが、今日もお仕事をする予定だったのでそうもいかないのだった。
昼過ぎに三宮駅前のスターバックスでアプリカントのNさんと待ち合わせ。このHPを見て連絡をくれた彼と神戸に帰ってきたタイミングに合わせて会うことになったのである。スタバに行くとNさんらしき人物の隣に先日三宮で飲んだMさんが座っていてびっくり。聞けば奨学金の面接で偶然隣りに座って知り合ったとのこと。こうして色んな糸が繋がりあっていくんだよね。三人で二時間ほどスタバで話しこむ。
その後出社して、何とかパワーポイントの資料をひととおり作成し終わった。しかし一箇所だけどうしても満足いく内容になりきらないパートが残っており、何だか気分がすっきりしない。このパート、当プロジェクトが始まった当初からずっと気にかかっていたところなのだが、そういうものはえてして最後まで引きずるもの。明日、このパートの関連部門の人々と集中的にミーティングをするので、何とかすっきりする方向へカタをつけたいところだ。経験上も、自分自身が完全に納得できないまま臨むプレゼンは、オーディエンスにも違和感を抱かせてしまう。逆に自分が「良い内容だ」と納得できる内容のものに万全の準備で臨むことができれば、失敗などしようがないのである。
帰宅して読書。しかし、今後また重いスーツケースを抱えて東京へ、さらにアメリカへと帰らねばならないのに、神戸で調子に乗ってハードカバーをたくさん読みすぎたことを今さらながら反省。どうするんだこれ。これから帰国するまで読む本は文庫本に限定いたします。
7月29日(月) オン・オフの切り替え
土日ともに仕事をしていたところ、頭がぼーっとしてあまり働かない。生産性の低い一日だった。やはりオンとオフとの切り替えは必要だ、と実感する。結果として昨日目一杯遊んでいた方が今日も含めたトータルでの生産性は上だったりするわけだ。こんなこと8年間の社会人生活で嫌というほど分かっているはずなのに(そして僕は労働時間の長さにはまったく価値を覚えないはずなのに)、このざまである。短期集中型プロジェクトというサマーインターンの特性、質の高いアウトプットを出さねばオファーも出ぬぞという重圧、のなせるわざだろうか。いや、反省反省。
午後11時前にインターン仲間のIさんとさんざん開いている店を探し回った挙句、やっと見つけたダイニングバーにて深夜の夕食。
7月30日(火) 住基ネットようやく盛り上がる
昼過ぎ、サマーインターン仲間を集めてファイナルプレゼンのリハーサルをし、皆にいろいろと意見をもらう。そして、夕方は担当役員にプレゼン内容を説明し、OKをもらった。彼、パワーポイントのスライドの一枚がやけに気に入ったらしく、わざわざ秘書を呼びに行って「これ見なよ。傑作だろ。面白いだろ。僕の中では過去最高のお気に入りスライドだね。」と力説。秘書の方、ちょっと困惑気味。
自分としてはまだ納得のいかない一箇所に何とか手を入れたい、と思っていたところ、夜9時過ぎに当該部門のトップより「今からディスカッションしようか」と電話がある。30分ほどの会話の中にいくつかヒントがあったので、本番までにもう少し改善できるかもしれない。いよいよ最終プレゼンまで残り3日、だ。
ところで、今月はじめに「不自然なほどメディアが静か」だと書いた住基ネット、ここ一週間ほどで一気に盛り上がってきた。もはや日本じゅうでこの名前を聞いたことがない人はよほど新聞を読まない人だろう。ある町が離脱を表明したら、住民票移転の問い合わせが急増した、などとも報道されている。
今日、政令指定都市の市長を集めた会合では、住基ネットを説明に来た国会議員が「万全の体制を取っておりますから大丈夫です!」と力説していた。そこに何のロジックもなし。しかし、この日本語自体はそれほど珍しい表現でもない。おかしな表現、思考の停止した表現だ。その会合の後で中田ひろし横浜市長が「人の善意に依存したシステムというのは、社会の仕組みとしてはあまりに脆弱」と発言していた。まったくそのとおり。こんな巨大システムに「万全」なんてありえない。
何とか稼動が停止になると良いが。
7月31日(水) 7月の終わり
あっという間にもう7月も終わりなのだ。
プレゼンがいよいよあさってに迫ってきた今日は、ほぼプレゼン準備にかかりっきりの一日だった。パワーポイントのスライドはバックアップを除いて全部で50枚強。そのスライドに合わせてしゃべる内容を原稿に落としていくとワードファイルに計12枚にもなる。質疑応答も含めてこれを一時間以内に収められるかどうか、がまた問題である。
夜は、気分転換に飲みに出かける。気付いたら午前様に。